271回目
(遊女の暮らし 番外編②)
吉原の遊女に与えられた年に2回の休日は、桜の季節と7月の迎え盆の13日だった。
とはいえ、郭の外へ出られるわけではなく廓内だけ。
ちなみに吉原の夜桜というのは、自然の桜を見るというのではなかった。
毎年、桜の開花の季節になると、背を低く育て開花間近かの桜を、三河島の植木屋が、郭内に運び込み仲の町通りの中央に、青竹で欄干を作り、その中に桜を植え込んでいった。
この桜は妓楼、引手茶屋が金を出し合って買った物で、名の知れた花魁は、楼主から仕入れ値よりも高い額で買わされる場合もあった。
遊女の夜桜見学は、そうやって並べられた桜を、大門口から、おはぐろどぶで行き止る水道尻(みとじり)まで、ぞろぞろと見て歩くというものだった。